朝食の準備をしようと食器を並べ始めたルサカの手を、タキアが掴む。
タキアは珍しく早起きしてルサカの朝の準備を眺めていた。
「……うん? 特にないよ。いつも通り、ほうきウサギと掃除をして、夕飯の仕込みをして、残った時間で本でも読もうかと思ってた。書庫の本すごいね。料理から歴史から、色んなのあって楽しい」
タキアはルサカを見上げ、小さく微笑む。
「じゃあ、今日は僕のベッドで過ごそうよ」
ルサカの腰をつかみ、膝上に引き寄せて、頬に口付ける。
「……待ってたんだよ。もうそろそろいいよね」
「待ってたって……何を?」
意味がわからず、ルサカは聞き返した。
「ルサカが元気になるの、待ってた。……ルサカくらい小さいと、繁殖期の交尾に耐えられないで死んじゃう事もあるから、ほどほどにしないといけなかったんだよ」
あれでほどほどだと?
ルサカは思わず言葉を失う。
「だからみんな、まだ育ちきっていない人間を番人にしないんだ。せっかく可愛がってても死んじゃったら嫌じゃないか」
交尾で死ぬだと?
ルサカは頭が真っ白になっている。
「普通はそういう、育ちきってない人間を拾ってきたら、育つまで待つんだ。……ごめん、育つまで我慢出来なかったんだよ」
言いながら、再び口付け、甘く唇を吸う。
「気をつけてたけど交尾しすぎて、ルサカが弱ってたから……待ってたんだ、元気になるの。今日はたくさんしようね」
なんて恐ろしい生き物なんだ、竜は。交尾しすぎて死ぬだと?
だから発情期が終わったあともあんなに空腹が続いたのか。
今更ながらにルサカは最初の恐怖を思い出す。
「……ちょ、待ってよタキア」
慌てて唇を引き離す。
「嫌だよ、一ヶ月も我慢したんだよ。今すぐしたいくらいなのに」
「待ってよ、朝ご飯くらい食べさせてよ。お腹すきすぎて死んじゃうよ」
ちょうど朝のパンの焼きあがる時間だった。
ぐずるタキアの手を引き剥がしながら、オーブンから天板を取り出し、気付く。
もしかして繁殖期以外なら、竜を拒めるんじゃないのかな。
繁殖期はタキアがしたい、と言い出したらまず拒めなかったのに、今はこうして引き剥がせている。
タキアもそれ以上はしつこく交尾を要求せずに、おとなしく朝食に付き合っている。
繁殖期以外なら、交尾もこうして交渉の余地があるかもしれない、とルサカは慎重に考える。
朝食を済ますと片付けもさせずに、タキアはルサカを抱き寄せて触り始めた。
これは相当我慢していたんだろう。
タガが外れたように、ルサカに口付け、撫で、噛み、吸い付く。
「……タキア、ベッドは…?」
厨房の床に転がされて半裸のまま、ルサカは文句をいうが、タキアは止める気はなさそうだ。
「もう無理。……ベッド行くまで我慢できないよ」
発情期の魔力だったのか、あの時ほど言いなりにはならないでいられた。
今のところ、ルサカはまだ余裕があった。
少なくとも、厨房の床じゃ痛い、と文句を言えるだけの理性が残っている。
「床、冷たいし痛いよ……」
その言葉に、タキアは慌てて跳ね起きる。
「ご、ごめん……。ベッドにいこうか」
石の床に転がされて冷えたルサカの身体を抱き上げて、大人しく寝室に向かう。
これはもしかして。
ルサカはちょっと冷静になって観察している。
竜の興奮で番人も興奮するのかもしれない。
竜の余裕=番人の余裕なんだ。
なるほど、と思いながら、ベッドに降ろされ、そのままタキアに圧し掛かられる。
本当はタキアはそれほど興奮してないのではないだろうか。
ルサカはおとなしくされるがままになっているが、タキアの観察をしっかりと続ける。
「……ずっと触りたかったけど、触ったら、したくなっちゃうからね。……キスだけとか、さみしかった」
ルサカの髪を撫でながら、何度も口付ける。
竜はスキンシップが大好きで、寂しがり屋なのかなもしかして。
そう考えると、素直で子供っぽいタキアが、少し可愛く思える。
ルサカはちょっと迷って、それから、おずおずと背中に両手をまわしてみる。
見た目こそ大人にみえるが、タキアの中身は子供そのものの天真爛漫さだ。
「……ルサカ、大好きだよ」
ルサカの唇や頬にキスを繰り返しながら、タキアはルサカのシャツの中に手を滑らせる。
優しく撫で、身体のラインを辿る。
発情期の時みたいに、何がなくとも挿入、とにかく挿入! というわけじゃないらしい。
これが発情期外の交尾かあ、とルサカはまだまだ余裕があった。
「ルサカ、舌、だして……」
口付けを繰り返し、タキアがねだる。言われるままに舌先を差し出すと、タキアは甘く吸い付き、食んだ。
「は……ルサカ、かわいい」
次第にタキアの息が荒くなってくる。
それに釣られるように、ルサカも甘く吐息を洩らしはじめる。
これは限りなく、普通の性行為なんじゃないだろうか。
例の古い書庫に、官能小説っぽいものがあったのを見つけて、ルサカはこっそり読んでいた。
本当の、人間の性行為がどんなものなのか、確認していたのだ。
ルサカも経験があるわけじゃないし、本にはだいたいこんな感じで甘い雰囲気から性行為、っぽい描写があった。
シャツの中のルサカの素肌を探っていたタキアの指先が、胸の突起に触れた。
その瞬間、ルサカの身体に変化が訪れた。
「あ、あっ……ふぁ……」
小さな突起を摘まれ、軽く撫でられただけで声が甘く蕩けてしまう。
「かわいい声……もっと聞きたい」
シャツをたくし上げて、その素肌に舌を這わせる。
ちゅ、と音を立てながら辿り、胸の突起に舌先で触れ、舐める。
「あぁあっ…! タキア、あっ…!」
少し舐められただけで、全身が甘く蕩けそうに痺れ始める。
ルサカの甘い声に釣られて、タキアの愛撫がより激しくなる。
胸の突起を舐り、舌先で捏ねる。
それだけで感じすぎるのか、ルサカは背筋を震わせている。
「……気持ち良さそう。……こっちもすごいね」
タキアは手を伸ばし、ルサカの下着の中に差し入れる。
胸を弄られただけで、ルサカのそれは蜜を洩らしながら硬く膨れ上がっていた。
「ルサカ、こんなになってるよ。……ルサカも僕としたかった?」
タキアの指がルサカの硬くなったそれを擦りあげるたびに、濡れた音が立つほどに、ルサカは蕩けていた。
「出ちゃうかな……ほら、ルサカ……」
下着の中で、タキアの指先が、蜜を溢れさせる鈴口を撫で、擦る。
そのたびにくちゅっ、という音がルサカの耳を打つ。
「あ、あっ…! あ、タキ、ア…、もう、いっちゃ、う、だめ、あ、あっ…!」
ルサカは堪らずに甘えた声で鳴いて、果てた。
どろっとした体液が、下着を濡らす。その感触に、思わずルサカは身震いする。
「たくさん出たね、ルサカ……。次はどうしたらいいか、わかるよね」
タキアはルサカの耳朶を甘く噛みながら、達してすぐまた硬く膨らみ始めたルサカの性器を撫で続ける。
ルサカは言われるままに、下着ごとズボンを下ろす。
「……どこに入れて欲しいの? ……僕によく見せて」
タキアの息は興奮に荒く乱れている。この声を聞いたら、もうルサカは逆らえない。
タキアに性器を弄られながら、自分の片方の膝裏を掴み、おずおずと足を開く。
「……ルサカ、いい子だね」
ルサカの震える唇に口付けてから、タキアはルサカの膝を押し上げ、ルサカの秘められた場所を晒す。
「もう赤くなってる。……ひくひくしてるよ、ルサカ」
ルサカは羞恥に震えながら、身体を竦めているが、タキアが欲しいという欲望には耐えられそうになかった。
タキアが見せ付けるかのように、ズボンをくつろげ、その硬く大きく反り返った異形の生殖器を取り出しただけで、堪らずに甘く声を洩らしてしまう。
「タキア、はやく、ねっ……」
膝を掴むタキアの手に指をかけ、ねだる。
「ルサカは本当に素直だね……。……いいよ」
その膨れ上がった異形の生殖器で、タキアを求めてひくひくと痙攣を繰り返す蕾に押し付け、先端を含み込ませる。
「あ、あっ……あ、んぅっ…!」
思わずルサカは腰を揺らし、その先をねだる。
「っ…だめ、だよ。……いきなり奥までいれたら、壊れちゃうよ……」
「だ、って、あ、あーっ…あ、んぅっ…」
タキアが浅く挿入し、出し入れするだけで、蕩けて甘い声を洩らす。
ゆっくりと出し入れするたびに、タキアの先走りでぬめり、くちくちと濡れた音が響く。
「あっ、あう、くぅ、んっ……」
その蕩けそうな甘さに、ルサカはうっとりと吐息を洩らす。
ルサカの硬く立ち上がったそれは、浅く突かれるたびに、たらたらと体液を洩らし、下腹の紅い花を濡らしていた。
「っ、は……僕も、そろそろ限界かも。……く、っ……」
浅く出し入れしていたそれを、そのまま奥までゆっくりと挿入する。
タキアはそのまま激しく突き上げ始める。
「あっ、ああっ…! あ、んくぅ、ああっ…!」
熱く脈打つそれに、息が出来ないくらいに感じてしまう。
ただひたすらに、ルサカは喘ぎ続ける。
タキアはルサカと繋がったまま、ひたすら髪を撫でたり、頬やこめかみに口付けたり、時々甘く唇を吸ったりと優しい。
これはあれだ。
まさに官能小説の性行為と同じだ。
下腹にタキアの熱を感じながら、ルサカは真剣に考え込む。
発情期のタキアは文字通りのケダモノで、とにかく挿入させろの一点張りだったけれど、ちゃんとこういう、人間ぽい交尾も出来るんじゃないか。
最初からこうだったら、少しはタキアの人っぽいところを愛したり出来たのかな、とかルサカはぼんやり考える。
ふと、髪を撫でるタキアと目が合う。
この不思議なすみれ色の瞳は、よくみると人間の虹彩や瞳孔と違う。
瞳孔は猫や蜥蜴のように、細い。
濃いすみれ色の虹彩で目立ちにくいが、こうして近くでよく見ると、やはり、人ではないのだな、と思い知らされる。
そう考えてから、思えば一番人でないところは、今、自分の中に埋め込まれてるタキアの明らかに人外なこれの方だな、とか一人で納得する。
じっとルサカが見上げると、タキアは子供のように無邪気に笑う。
もし、タキアを愛せたら、交尾がただ気持ちいいだけの行為じゃなくなるのかな。
そんな事を考えていると、見上げるルサカに誘われたように、タキアが唇を寄せる。
唇を子猫のように舐め、ルサカの舌先を誘う。
薄く開いたルサカの唇から舌先を誘い出すと、その熱く柔らかな舌先を甘く食む。
下腹の紅い花の奥にあるタキアが、再び熱く張り詰め始めると、たまらずに焦れたルサカは腰を揺らして、その先をねだる。
タキアの小さな笑い声が聞こえる。
「ルサカ、えっちだね。……本当に可愛い。大好きだよ」
タキアの無邪気な笑顔に、ルサカは少し、胸が痛む。