タキアが少し目を離してエルーと話している間に、ルサカはぐいぐいと林檎酒を飲んでいた。
タキアが気付いて取り上げた時には、なみなみと注がれていた林檎酒はグラスの半分くらいになっていて、ルサカはほろ酔いを越えてべろべろになっていた。
とろん、と惚けているルサカにエルーが鋭く反応したので、タキアは容赦なく速やかにエルーにお帰り頂いて、それからルサカの手当てをしている。
この巣に連れてきてから今日に至るまで、ルサカとタキアの寝室は別だ。
一緒に毎日寝たい! とタキアが何度も主張したが、ルサカに断固拒否されている。
それは寝ている間にタキアに何をされるか分かったもんじゃない、というのもある。が、最大の理由は、ルサカの眠りが浅いので、誰かと一緒に寝ようものなら熟睡出来ないからだ。
泥酔したルサカを部屋まで運んで、その幸せそうな寝顔を、先ほどからタキアは観察していた。
ルサカの部屋は厨房のそばの小さな南向きの部屋で、彼らしく、質実剛健な質素さだった。
『この城がタキアの巣なように、この部屋はぼくの巣だから、ぼくが居心地いいように狭くないといけないんだよ』とルサカは言っていた。
タキアの天蓋付きの豪華なベッドと違って、ルサカのベッドは至ってシンプルなもの。この古城の物置から引っ張り出してきた、真鍮のなんの飾り気もない、質素なベッドだった。
リネン類だけは、タキアが強奪してきた大量の絹や高価なコットンを、ダーダネルス百貨店が仲介している業者に縫製してもらっているのでものすごく豪華だが、他は非常に質素。
タキアが珊瑚を呼んで豪華な家具を揃えようとするのを断って、古城の物置を漁っては、気に入ったシンプルな家具を引っ張り出して、ルサカの言うところの、『ルサカの巣』に運び込んでいた。
ベッドに、座り心地のいい椅子に、シンプルなライティングデスク。小さなテーブルの上には、書庫から持ち出したであろう、古い本の山。
古すぎるだろうし、今度、珊瑚に頼んで、最近の人間の本を見繕ってもらおう、とかタキアは考えている。
綺麗なものが大好きで贅沢な竜にとって、ルサカの部屋はシンプルすぎた。
こんな質素でいいのかな、とかタキアは思っているが、ルサカがここは自分の巣! と主張するので、今のところ手出しはしていない。
当のルサカは、すうすうと幸せそうな寝息を立てて、絹の寝具に鼻まで埋まって眠っている。
こんな蕩けそうな笑顔のルサカを見た事がなかったタキアは、しみじみと観察しながら、こんなちょっっぴりえっちな可愛い寝顔を見られるなら、少しくらいの飲酒は大目にみても……とか、ダメな事を考えている。
最近、ルサカが恥ずかしがってなかなか交尾をさせてくれないものだから、タキアも色々と我慢をしている。
前は明るいところでも、多少しつこくすれば交尾出来たのに、今では明るいところは断固拒否される。
そもそもタキアの目なら真っ暗でもよく見えているのだが、そういう問題じゃない、とルサカにめちゃめちゃ叱られた。
明るい陽の下で、ルサカの綺麗な顔や身体が見たいのに、それの何が悪いのか。
月明かりやランプの仄かな明かりもいいけれど、ルサカが綺麗なのは断然お日様の下なのに。
新緑色の瞳も、この濃い茶の髪も、瑞々しい白い肌も、快楽に震えるその淫らな姿も、このお日様の下で見るのが一番綺麗なのに、ひどい話だ、と激しく不満に思っていた。
相変わらず幸せそうに蕩けた顔で眠っているルサカの頬を、軽く突いてみる。
ルサカはむにゃむにゃ何か言っているが、起きる気配はなさそうだった。
頬を軽くつついて、緩く開いた唇にも軽く触れる。すると、ルサカは相変わらずむにゃむにゃ言いながら、その悪戯するタキアの指を掴んで、口元に運ぶ。
何かおいしいものの夢でも見ているのか、その掴んだタキアの指に、軽く吸い付いて、甘噛みしている。
この辺りでタキアのタガが外れた。
眠っているところに何かしたら、あとでめちゃめちゃルサカに怒られそうだなあ、ともタキアは思ったが、ちょっと我慢出来そうにない。
久し振りに明るい陽の下でルサカの裸が見られる、という誘惑に勝てなかった。
片手でルサカが潜っていた寝具を剥いで、シャツの中に手を滑らせる。
酒のせいか、ルサカの素肌は熱を帯び、ほんのりと桜色に染まっていた。
ルサカが目を覚ましそうな気配はない。
タキアは吸い付かれていた手をひいて、もどかしげにルサカの服を剥ぎ取りながら、晒された素肌に唇を寄せて、甘く吸い付き、柔らかく食む。
さすがに気付いたのか、ルサカが小さな声で何か言いながら、身体をよじって逃れようとしているが、ほぼ眠った状態と変わりがない。
そのなめらかな肌を唇で楽しみながら辿り、下腹の紅い花を甘く噛む。そのまま、無抵抗のルサカの足を開かせて、白い足の付け根に唇を寄せる。
ちゅ、と音を立てて吸いついた途端に、膝頭が跳ねたが、まだ目が覚めないのか、ルサカは無意識に足を閉じようとする仕草は見せているが、反応は薄かった。
そのままルサカの足を大きく広げて、タキアを迎え入れる両足の奥の秘められた場所に、唇を寄せる。
軽く口付け、くすぐるように舌先でなぞると、ルサカの背中がびくん、と震え仰け反った。
「なっ……なに…?!」
さすがに目が覚めたようで、ルサカは跳ね起きようとしたようだったが、胸に付くほど両足を押し広げられていて、それは叶わなかった。
まだ寝ぼけているのか、ルサカは状況が理解出来ていないようだった。ただ、大変にふしだらで赤裸々な体勢を取らされている事は理解した。
「な、タキア……! なにしてるの……っ!」
これは怒られるだろうなあ、とタキアも思っているが、ここでやめる気なんか毛頭ない。
「交尾」
あっさりと返して、再び唇を寄せる。
「あ、あっ……!」
ひくん、とルサカの爪先が跳ねた。
タキアの柔らかな舌先は、その閉じられた場所を丹念に舐め、つつき、濡れた音を響かせる。
「やめ、タキア…っ…!」
もうルサカの声は震えて甘さを増しているし、タキアの舌先にこじ開けられたそこは、赤く充血し綻び始めている。
「タキ、ア……、嫌だ、こんなの……恥ずかしい、嫌だ…っ…」
細く甘く乱れた声で、ルサカが微かに抵抗を見せる。
この拒否の言葉が、こんなにも蠱惑的で扇情的だとはタキアは知らなかった。
今こんな風にルサカに言われて、こんなに甘く、淫らで劣情を誘う言葉だったのか、と思い知らされている。
ルサカはタキアの興奮を誘ってしまっているとは露ほども思っていないだろうが、大変に煽ってしまっていた。
「……ルサカ、声が甘くなってる」
綻んだそこに、ゆっくりと指を差し入れる。蕩け始めたそこは、あっさりとタキアのしなやかで綺麗な指を、根元まで飲み込んだ。
「あ、あっ…! やめ、タキア…っ…!」
ルサカの指先がシーツを掻き、掴む。拠り所がないのか、その掴んだ指先は震えていた。
「ほら、ルサカ……もうこんなだよ」
言いながら、指を増やし、濡れた音を立ててゆっくりと出し入れする。
「くぅ…っ…! う、あ、あっ……!」
タキアは慣れた仕草で、ルサカの感じる場所を探す。熱くなったルサカの中、蕩けて熱を帯びた肉の襞を柔らかくなぞっていくと、ルサカの爪先がひくひくと震える。
「ルサカ、どこ?……どこが、気持ちいいの?」
わざと、ルサカの一番感じるところを避けて、撫でる。焦れたルサカは、堪らないのか、腰を揺らして誘ってしまっている。
「お、く、もっと…もっと、奥、に…っ…」
耐え切れずに、淫らに腰を揺らしてねだる。なめらかな腿の裏側に甘く噛み付きながら、奥の、ルサカの一番感じるところを強く幾度か擦り上げる。
「あ、ああっ…、は、あっ…!」
ルサカはひときわ高く甘い声をあげて、それだけで達してしまった。
白く濁った体液が、下腹の紅い花を濡らす。
明るい陽の下で素直に身体を投げ出して、荒い息を紡ぐルサカは、それは淫らで、可憐で、綺麗で、タキアは思わずため息を洩らす。
タキアはその濡れた下腹の紅い花に唇を寄せ、舐めとりながら、荒い息をつくルサカの胸元を辿る。
「ルサカ、可愛いね。気持ちよかった?……指だけでいっちゃったね」
仰け反ったままの白い咽喉を辿り、唇に触れる。
荒く甘い息を吐くルサカの唇に吸い付くと、ルサカは甘えたように、舌先を差し出した。
「タキア……、好き……」
眦に涙を溜めて、甘い声でルサカが呟く。
こんな素直なルサカ、滅多に見られない。たいてい強がったり、恥ずかしそうだったりしているのに、今日は素直で甘えているように見えた。
ルサカにほんの少し飲ませるくらいなら、悪くないかもしれない、とか、タキアは悪い事を考える。
「……僕も。大好きだよ、ルサカ」
ルサカの片足を抱えあげて、もうはち切れんばかりにルサカを求めて硬く熱くなっていたそれを、蕩けたルサカの蕾に押し当て、ゆっくりと挿入する。
林檎酒のせいか、いつもより更に、ルサカの中は熱く、きゅうきゅうと締め付ける。その甘美な感触に、タキアは思わず熱い吐息を洩らす。
「やばっ……ルサカ、そんな締め付けないで。……こんなの、我慢できな…っ…」
幾度かゆっくり擦り上げただけで、タキアの背筋が震え、声を詰まらせる。
「だ、って…こんな、だめっ…あ、ああっ…!」
タキアの激しい興奮が伝わるくらい、ルサカの中のタキアは甘く狂おしく、圧迫する。ルサカは喘ぐばかりで言葉が出てこないようだった。
「タキア、あ、あっ、ああ……あぁああっ!」
幾度か突き上げただけで、ルサカは再びあっさりと達した。その強烈な締め付けで、タキアもルサカの中に、張り詰めていた欲望を吐き出す。
「……は、…っ…くぅ……っ…」
ルサカの中の熱さときつさに、タキアも切なげな声を洩らす。荒い息のまま、ルサカの薄く開かれた唇に唇を寄せ、甘く食むと、ルサカはゆるく、微笑んだ。
「タキア……すごくえっちな顔してる。……綺麗だ」
常日頃、ルサカはえっちだなと思っていたタキアだが、これは反則だ。今のルサカの方が、遥かにいやらしくて可愛いし綺麗だ、とタキアは心の底から思った。
そんな淫靡な顔と声に、素直にルサカの柔らかな襞に包まれたタキアが反応する。
「あ、んんっ……」
中でまた硬く脈打ち始めたタキアの昂ぶりに、ルサカが甘く吐息を洩らす。
これはルサカが誘ったんだ、と言い訳しながら、タキアはルサカの腰の両脇に手をついて、再び硬く張り詰めたそれを、ルサカの熱く甘く蕩けた襞に擦りつけるように、ゆっくりとルサカを揺すり上げはじめる。
タキアが動くたびに、真鍮のベッドは軋んだ音を立てて揺れた。
「あ、あっ…タキア、やっ…は、あ、あっ…!」
繋がったそこから、粘った水音が響く。深く突き上げるたびに、ルサカの唇から、甘く高い悲鳴が零れ落ちて、タキアを惑わす。
「ルサカ、好きだよ。……大好きだよ」
そう囁くと、ルサカは薄く目を開けて、蕩けそうに微笑んだ。
「……うー……頭痛いし、なんだか胃も痛い……」
ルサカの質素な真鍮のベッドは正直狭い。二人で寝るには密着しなければならない。
タキアはルサカを背中からぎゅっと抱いて、項やら首筋やらに、キスの雨を降らせているが、当のルサカはされるがままにぐったりしていた。
「初めて飲んだから、悪い酔いしたのかもね。……あんなに一度に飲むからだよ」
くたっとしたルサカの頭を撫でたり、優しくキスしたりと、タキアはかいがいしい。
「お酒とかもういいよ……。ぼくは林檎ジュースで十分だよ……」
ルサカは目を閉じてぼそぼそ呟く。
「ええっ。少しくらいいいじゃないか。……たまには飲もうよ。ルサカと一緒に楽しみたい」
一体何を楽しみたいのか、タキアの発言は非常に意味深だ。
「すごく綺麗だったし、口当たりも良かったからついつい飲んだけど……もうだめだ、頭がんがんする……」
それはもしかしたら、酔っ払ってくたっとなっているところをめちゃめちゃ揺さぶられたせいかもしれない、とタキアは思い当たったが、怒られそうなので黙っておく事にする。
ちゃんと看病しよう、と今更にタキアは思う。
それは多分、罪悪感から、だけれど。