竜の棲み処 異聞録

#18 可愛くずるくままならず

「舐めて欲しいんだ」
 そう真顔で言われた時、本気で何の事か分からなかった。厨房でケーキを作っていたルサカは、クリームをぐるぐるかき混ぜながら、ぽかんとタキアを見上げる。
「前にしてくれたやつ、今度は目隠しなしでして欲しい!」
 タキアの言葉が足りないのはいつもの事だ。ルサカもいい加減慣れた。今のでやっと意味が分かった。どこを舐めて欲しいのかもよく分かった。
 竜に羞恥心らしい羞恥心はないし、タキアに婉曲な表現ができるはずがなく、常にストレートに表現する。
 だからってこれはない。幾らなんでもない。何故、脈絡もなく昼日中から、ケーキを作っている最中に突然言い出すのか。
 こんな事を唐突に言われて、分かった! やろう! とはならないと、少し考えれば分かるのではないか。
「……何を」
 分かっているが、最後まで聞いてやろうかという気持ちになった。タキアの答えは分かっているが、ルサカは一応言ってみる事にした。
「僕のせ」
 泡立て器を放り出して、ルサカは片手でタキアの口を塞ぐ。まさかそこも直球だとは思わなかったが、考えてみたらタキアならやりかねなかった。
「竜に羞恥心を持てっていっても無理だろうから、そこはいいよ、この際。けど、雰囲気ってものがあるだろ。なんで今言うんだよ。せめてベッドで言おうよ。なんでそんな空気読めないの」
 ばっさりと叱られて、タキアはあからさまにしょんぼりとしおれてしまった。しおれるくらいなら、もう少し考えてから発言すればいいのに、とルサカは思うが、このしょんぼり顔をみると、どうしても許してしまいそうになる。ルサカにとって、このタキアのしょんぼり顔はとても可愛く思えてしまう。
「そんなにルサカが怒るなんて思わなかったんだ……」
「怒るというより呆れてるんだよ……。そういう雰囲気の時にいうものだよ、こういうのは」
「僕のを舐めるのがそんなに嫌だったなんて思わなくて」
「だからそういう問題じゃないんだよ。今このケーキ作ってるところから、いきなりそういう事はしないだろうって言いたいの」
「本当に? 嫌じゃない? 嫌だからだめって言ってるわけじゃないんだね?」
「い、嫌じゃないよ……っていうか今はその話じゃなくて、雰囲気の事を言ってるの!」
 もうタキアと暮らして一年ちょっとだが、どうにもこの性への考え方や羞恥心のなさのズレは否めない。最近はそれなりに慣れてきたつもりだったが、たまにこんな爆弾みたいなすれ違いをやらかすのがタキアだ。
 タキアの素直で正直なところは、とても可愛くて大好きだとルサカも思っている。思っているが、こういうところはそんな素直に出さないで欲しいと心の底から思う。
 もっとロマンティックにとは言わない。普通の感覚が欲しい。
「嫌じゃないなら、すごくして欲しい! 前にルサカがしてくれた時は目隠しされてて見えなかったから、どんな風にルサカがしてくれてるのか、見たい!」
 タキアは何故こんな子供のように無邪気に可愛く、とんでもない事を言えるのか。そういう行為は夜にひっそりやるものだと思っているルサカが、ものすごく邪でいやらしい考え方をしているように思えてしまう。
 多分タキアはふと思いついたのだ。思いついたから、ルサカにおねだりした。そこに何か深い考えや他意はない。して欲しいからおねだりしただけだ。分かっていてもルサカは羞恥でいたたまれない。
 そして今の会話の流れで、タキアがめちゃめちゃその気になっているのはルサカも分かった。竜の興奮に番人はつられる。タキアがそういう状態になれば、ルサカも身体が反応してしまうから、嫌でも伝わる。
「前にルサカがしてくれた時、すごく気持ちよかった。ルサカにするのも大好きだけど、ルサカが僕にしてくれてるところ、見たい」
 ルサカの華奢な腰を抱き寄せながら、タキアは頬をすり寄せて甘えた素振りを見せる。本当にタキアはずるいと心からルサカは思う。
 タキアの興奮につられてルサカの身体も火照ってしまう上に、こんな風に可愛くされたら、ルサカは逆らえなくなってしまう。言っている内容がひどいのに、可愛くてつい甘やかしたくなってしまう。
 手にしていたクリームのボウルを投げ出して、タキアの背中を両手で抱きしめる。結局、ルサカはタキアに負ける。タキアが好きな上に、竜の興奮につられずにいられないなんて、ルサカに勝てる要素がまるでない。
「……僕はルサカのをするのも大好き。……ルサカが気持ちよさそうだと、もっとしたくなる」
 そう囁きながら、タキアは背中に回されたルサカの右手を取って口付け、自分の下腹まで導く。
「ルサカは? あの時、どうだった? 前に僕のを舐めてくれた時」
 あの時。ルサカがタキアにあんな事をしたのは、身体強化の魔法の練習をした時だけだ。あの時は魔力回復の為にタキアから搾り取る事しか考えていなかった。
 そう考えると酷い事をしたとルサカも反省せざるを得ない。あの時はタキアの精液を飲む事しか考えていなかった。そう言うとなんだか色っぽい響きがあるが、実際は魔力回復の為だけに、タキアの精液が欲しかった。全く色気も何もなく、回復的な意味で欲しかった。
 こんな嬉しそうなタキアの前で、まさか『すごく役に立ったよ』とは言えない。
「え、あ。うん……ええと、少しはその」
 必死にあの時の事を思い返す。あの時は本当に搾り取るのに必死で、タキアの観察なんてろくにしてなかった。思い返すとタキアに申し訳なくも感じる。完全にタキアの為でなく、自分の為だった。
 そう考えると、ここはタキアの望む通り、タキアが満足するまで奉仕するべきなのでは、とも思えてくる。こんなにルサカを愛してくれているタキアの純情(?)に、酷い事をしたようが気がしてくる。よくよく考えれば、ルサカが身体強化を覚えて一番助かっているのはタキアなのだが。
「ルサカが気持ちよさそうだと、すごく嬉しくなる。僕がルサカを好きなくらい、ルサカも僕を好きでいてくれたら嬉しい……」
 タキアの手は握ったルサカの手で、自分の下腹に触れさせる。服越しに伝わる硬く熱い感触に、ルサカの体温が跳ね上がる。本当に、ずるい。こんな風にされたら、番人は発情せずにいられない。
 それから、こんな可愛い事を言うのも反則だ。タキアが可愛くて愛しくて、なんでもしてやりたくなってしまう。
「ちょっと、タキア……こんな明るいところで」
 ルサカがなけなしの理性で拒もうとしても、タキアの唇は容赦なくルサカの頬や唇、こめかみに触れ、煽り立ててくる。タキアはいつもおっとりのんびりのくせに、こういう時だけは素早く手際もいい。
 ルサカの舌先を絡め取りながら、器用に自分のボタンを外し、ルサカの手を下着の中のそれに触れさせる。触れたそれはもう硬く膨れ上がっていて、ルサカはその感触に思わず吐息を漏らしてしまう。
「だってルサカがいい匂いさせてるから」
 ルサカの首筋に唇を押し当てながら囁くタキアは、今ルサカの手に触れているこれだけでなく、声まで熱く切なげで、余計にルサカは高揚してしまう。
 ルサカの手から離れたタキアの指は、器用にルサカのシャツのボタンを外し始める。
 全くそんな雰囲気ではなかったし、むしろ台無しにしていたはずなのに、なんだかタキアの思う通りになってしまうのが、とても不思議だ。
 結局、タキアが大好きで、タキアと抱き合うのが好きで、タキアの可愛いところをみてしまうと、ルサカもタキアが欲しいと思わずにいられない。
 本当に、タキアは可愛くてずるい。深くなる口付けに溶け落ちそうになりながら、ルサカは掌のそれをやんわりと撫で、握る。
 小さくタキアの吐息が詰まるのが聞こえた。



 こんな明るい厨房でこんな事するなんて、どうかしている。こういう事はやっぱり夜にひっそりと、ベッドの上でする事じゃないのか。そう思っているのに、ついいいなりになってしまう。
 竜の生殖器は、正直、とても凶悪な姿をしている。大きさといい形といい、あまりに人からかけ離れている。見慣れたつもりでも、明るいところで見ると、余計に生々しく大きく感じる。思えば初めて見た時は、こんなので犯されたら死ぬと思っていた。今は違う意味で死ねる。
 両手で握ったそれの根元からゆっくりとルサカの舌が這い上がると、タキアの唇から、切なげに乱れた吐息が零れ落ちた。
 こういう事はよくタキアにされている。だからどこが気持ちいいのか、どうしたらたまらなくなるのか、ルサカもよく知っている。
 タキアがするように、舌先にたっぷりと唾液を載せて根元から先端までを、丁寧にじっくりと舐め上げる。
 午後の明るい日差しの下で、タキアの膝にもたれるようにしながら目を伏せ奉仕するルサカの姿は、タキアをひどく煽る。小さな赤い舌先が動く度に、淫靡に濡れた音が響いた。
「ルサカ、も……」
 やんわりと甘い刺激を繰り返されて、焦れたタキアはもっと強い刺激をせがむが、ルサカは少し小さく笑って、舌先で体液を滲ませる割れ目をつつく。
「……舐めて、って言ったのはタキアだよ。……だから舐めてるの」
 付け根に指を這わせてやんわりと揉みしだきながら、硬く膨れ上がった先端を唇で甘く食む。誘い出した体液を、音を立てて舐め取ると、タキアの膝が跳ねた。
「……も、ルサカの中がいい、入れたい……っ」
 ルサカが今舐めているこれが、びくびくと激しく脈打っているのはよく分かる。緩慢な刺激に焦れて、もっと強い刺激に飢えている。
 いつもこうしてタキアに焦らされているから、ルサカはよく分かっている。これからが気持ちいいと、よく知っている。
 舐めていた先端から唇を引き離して、タキアを見上げると、タキアはほっと息をついたようだった。
「ルサ……」
 膝にもたれたルサカを抱き寄せようとタキアが腕を伸ばした時に、ルサカは両手できゅっと根元から半ばまでを締め付け、擦り上げる。
「……あ、くっ……!」
 思わぬ不意打ちに、タキアの唇から堪えきれない喘ぎ声が零れ落ちた。そのままルサカは先端を口に含み、強く吸い上げる。
「やば……っ、ルサカ、そんなの、は…っ!」
 根元から半ばまできつく扱き上げながら、含んだ先端をきつく吸い続ける。竜の生殖器は人のそれより大きく、形も違う。咽頭奥まで取り込むのは難しいが、咥えられるところまで咥えて、濡れた音を立てて啜り、吸い上げる。
「ルサカ、も……っ!」
 ルサカの髪に優しく触れていたタキアの指先が、大きく震え、ルサカの咽頭に熱い体液が叩き付けられた。
 荒い息をつくタキアのそれをゆっくりと唇から抜き出し、ルサカはタキアの体液で濡れた唇をぺろり、と舐める。
「……気持ちよかった? ……ぼくもいつもこれくらい、気持ちよくしてもらってる」
 ルサカもタキアが大好きだ。いつもタキアがしてくれるようにしようと少し舐め始めると、すぐにタキアに邪魔をされてゆっくり舐める事なんてできなかった。
 今日はタキアの切なげな色っぽい顔を見ながらできて、嬉しくもあった。思わず微笑みながらタキアを見上げてしまう。
「……ルサカがもう、可愛いすぎてどうにかなりそう」
 ルサカは思わず小さな笑い声を漏らしながら、まだ硬さを残すタキアのそれを舐める。濡れたそれを根元から舐め、残った体液を吸い出そうと先端に唇を寄せると、触れる前に素早くタキアに抱き起こされてしまった。
「すごく気持ちよかった。……ルサカは? 僕のをしてて、どうだった?」
 タキアは本当に意地が悪い。いや、これは決して意地悪をしてルサカの羞恥を煽ろうとしているわけではないのだ。無邪気に聞きたがりなだけなのだ。そう分かっていれば、ルサカが羞恥を感じないというわけではない。
「そういう事聞くな。……タキアが気持ちよさそうなの、ぼくだって嬉しいよ……」
 小さな声でぼそぼそ返すと、タキアは嬉しそうに、ルサカの下腹に手を伸ばす。
「うん。……ルサカのも硬くなってる」
「ちょっと、どこ触って」
 今更羞恥を呼び起こされたルサカは、慌ててそのタキアの手を引き剥がそうとするが、こういう時のタキアはいつものおっとりのタキアとは思えないくらいに、手早い。
 素早くズボンのボタンを外し寛げて、下着の上から触れてくる。
「なんだか濡れてる。……ルサカ、もう滲んでるよ」
 濡れた生地の上からやんわりと先端を撫でられて、ルサカはたまらずに背を震わせる。
「や、やめ、あ……っ!」
 濡れた生地越しに優しく擦られて、ルサカの息はすぐにあがってしまう。こんな時のタキアの指先は、本当に意地悪だ。
「舐めてっていうから、舐めたのに!」
「僕もルサカにしたくなった。……だってあんなえっちに舐めてるルサカを見たら、やっぱり触りたい」
 片手でルサカを抱き寄せたまま、タキアの指先は執拗に濡れた先端を弄る。優しく擦られて、ルサカのそこからは止めどなく蜜が溢れ出てしまう。
「ふあ、あっ……あ、も、タキア……っ……」
 弄るタキアの手を掴んで止めようとしても、指を添えるだけだ。ルサカはもう逆らえないくらい、蕩けていた。
「僕のを舐めながらこんな濡らして、ルサカはえっちで可愛い」
 指をねっとりと濡らし糸を引き硬く張り詰める先端を、タキアは丁寧に優しく、布越しに愛撫する。さっきの仕返しかというくらい、じれったく優しい愛撫だ。
「だって、あんな事してたら……んんっ……!」
 甘えた声を出して、先をねだってしまう。
「うん。嬉しい。ルサカが僕のをしながらこんなになってるって、すごく嬉しい」
 可愛い事を言っているが、容赦なくルサカの羞恥を煽っている。タキアは本当にずるい。無邪気にルサカの理性を蝕んでくる。
 下着の上から弄んでいたタキアの指が、ゆっくりとルサカのズボンごと下着を引き下ろす。華奢なルサカの腰を片手で抱いて厨房のテーブルに仰向けに転がして、タキアはそのまま覆い被さってきた。
「ルサカ、ほら。……ルサカのすごいよ。こんなに硬くて熱くて、ぬるぬる」
 片手でルサカの膝を掴んで広げさせながら、タキアは硬く張り詰めたルサカの性器をきゅっと握る。
「ちょっと擦っただけで、こんな音……」
 タキアの綺麗な指が軽く擦り上げただけで、粘った音が派手に響いた。
「も、タキア、意地悪するな……っ……!」
 羞恥のあまり膝を閉じようとあがくが、タキアの身体が足の間にあっては閉じられない。簡単に膝裏を取られて、大きく広げられてしまう。
 半身を起こして着たままだったシャツで隠そうとするが、もうこんなに煽られていては身体に力が入らない。震える指でシャツを引っ張るので精一杯だ。
「……ああ、もうこっちも」
 ルサカの硬くなったそれを擦り上げていた手が、不意に離れた。ルサカが息をつく暇もなく、その離れた指先はルサカのなめらかな内腿を滑り落ち、足の付け根から両足の奥に触れてきた。
「やめ、あ、あっ!」
 固く閉じているはずのそこは、もう小さく震えていた。たっぷりと溢れたルサカの先走りはここまで伝い落ちて、まるで自ら濡れているような錯覚をさせる。
「こっちも濡れてる。……ルサカ、僕のを舐めるだけで、欲しくなった? そうだったら、すごく嬉しい」
 ルサカの体液で濡れたタキアの指先が、くすぐるようにそこに触れた。もう既に小さく収縮していた蕾は、敏感にその指先を感じ取る。
「は、あ、あっ……も、タキア、だめだ、あ、あっ……!」
「べとべと。……濡れてるせいかな、すぐ入りそう」
 軽く指先を押し当てただけで、そこはあっさりとタキアのしなやかな指先を飲み込んだ。
「いつもより熱いくらい。……もうなんだか柔らかくなってる気がするかな……」
 細い喘ぎ声を漏らしながら、ルサカのそこは簡単にタキアの指の侵入を許した。すんなりとタキアの指を根元まで飲み込み、淫らなくらいに熱く絡みついて締め付けているのが、ルサカも自分で恥ずかしいくらいに、感じられた。
「ふぁ、あ……あ、気持ちいい、どうしよう、タキア。……すごく、気持ちいい……」
 思わず甘えた声でタキアにしがみつき、囁いてしまう。タキアの指がたまらなく甘く感じられて、下腹の紅い花の奥が切ないくらいに熱く、蕩けていた。
「ルサカ、可愛いね。……大好きだ。……僕がこんなに欲しかった? 僕のを舐めているだけで、感じた?」
 ルサカの中に沈められていた指が、ゆっくりと動き出す。優しく柔らかく中の熱くなり始めた襞を撫でられて、ルサカの身体が小さく震える。
「だって、タキア、が、いやらしい顔、するから。……あ、あんなえっちな声、聞いたら」
 いつも強がって素直ではないルサカも、こんな時は素直になる。指を咥えたそこから淫らな粘った音がこぼれ落ちるが、それもルサカを煽るのだろう。タキアの指を抱きしめる柔らかな粘膜はきつく締め付けながらも、蕩けそうに熱く柔らかだ。
「僕も。ルサカがあんなえっちな可愛い顔で、僕のを舐めるから、ものすごくルサカが欲しくなった」
 のし掛かりながら、再び硬く膨れ上がり熱くなったタキアの異形のそれが、ルサカの濡れて硬くなった性器におしつけられた。熱く脈打つそれを擦りつけられて、ルサカの背筋がびくん、と震える。
「すごくルサカの中に入りたい。今すぐ、ルサカの奥まで」
 ルサカの中を優しく撫でていた指が抜き去られ、タキアの両手に腿の裏側を掴まれ、押し広げられる。
 明るい日差しの下で大きく足を広げられて、ルサカは羞恥のあまり身体を竦めるが、タキアが欲しいという衝動には勝てなかった。
 晒されたそこに、すぐに切っ先が押し当てられる。硬く大きな先端が、綻び始めていたそこに押し込まれた。
「あ、あ……く、んっ…!」
 未熟なルサカの身体に、成熟した大人の竜の生殖器は大きすぎる。どれだけ交尾をしていても、最初は圧迫感がある。狭いそこを無理矢理に押し広げ、侵入してくる異形のそれに、ルサカは息を詰まらせる。
「くぅ、ん、タキア、おっき、い……も、壊れ、ちゃう……」
 そう言いながら、ルサカの声は甘く切なげで、番人が竜を誘う淫らな鳴き声そのものだ。その甘い声に誘われて、ルサカの狭い中に押し入ったタキアのそれが、ずくり、と更に大きく膨れ上がる。
「あー……あ、ん、んっ…!」
 ルサカの濡れた唇と、赤く染まった眦と、淫らに両足を広げ、竜の生殖器を迎え入れる姿は、この明るい午後の日差しの中で異質だ。
 穏やかな日差しに照らされながら、華奢な身体に見合わない、竜の異形の生殖器を突き入れられて細く喘ぐルサカは、可憐で儚げでありながら、貪欲に快楽を貪る淫らな妖しい生き物のようにも見える。
「……僕のルサカ。世界で一番可愛くてえっちで、大好きだよ」
 腿裏を押さえていた手を滑らせて、タキアはルサカの細く頼りなげな腰を両手で掴む。そのまま押さえつけ、容赦なく、小さく未熟な蕾に、異形の生殖器を根元まで一息に突き入れた。
 最奥まで貫いた熱く大きな肉の楔に、ルサカの白い咽頭が仰け反った。
 ルサカの中をこじ開け奥深くまで犯した竜の生殖器を激しく締め付け、収縮しながら、ルサカは声もなく達した。
 その激しい締め付けに息を詰めながら、タキアは荒い息を吐くルサカの唇に触れ、柔らかな舌先に噛みつく。
「タキア、だめ、だめ……あ、あ……!」
 達したばかりで未だ激しく収縮する中を、硬く膨れ上がったそれで突き上げ、擦り上げる。
「ルサカ、可愛い。大好きだよ。……大好きだ」
 ルサカの腰を押さえつけたまま、幾度も最奥を抉り、柔らかな粘膜を擦り、揺すり続ける。明るい日差しの厨房に、肉の擦れ合う淫らな粘った音と、切なげな吐息と、甘く蕩けた高い声が溢れる。



 厨房のテーブルで、椅子の上で、床で。
 何度交わったか分からない。それなのに、ルサカの中に深く埋め込まれたままのタキアは、熱く脈打ったままだ。
 繋がったまま、ルサカの額や頬、生え際に何度も口付けるタキアはとても幸せそうだけれど、散々快楽を貪ったルサカはほんの少し、理性を取り戻して正気に返っていた。
「……こ、こんな昼間から、こんなにして、だらしないじゃないか……」
 そう言いながら、ルサカの声は蕩けて震えている。何度も交尾して蕩けた内壁はとても敏感になっていて、未だ出て行く気配がないタキアのそれが与える快感に、感じずにいられなかった。
「……人間はそうなのかな。竜はこれが普通だよ」
 膝に抱いて繋がっていたルサカを、繋がったまま、床に押し倒して、タキアは再びゆっくりと腰を揺すり始める。
「あ、あ……っ……ん、こ、こんな、繁殖期みたいに、だらしなくしてたら」
 繋がったそこから、収まりきれない精液が溢れだしている。少し出し入れしただけで、ぐちゅぐちゅと聞くに堪えないいやらしい音が耳を打つ。溢れた精液だけではない。蕩けた粘膜と肉の楔が擦れ合う淫らな肉の音も聞こえる。
「……ああ。そうだ。そうだったね、忘れてた……」
 下腹に付きそうなくらい、硬く膨れ上がり立ち上がったルサカの性器に指を絡めながら、タキアは思い出したように口を開く。
「もうすぐだね、繁殖期。……だからこんなにルサカが欲しいのかな」
 浅く出し入れされていたそれが、奥まで入り込んでくる。再び敏感な奥をごりごりと突き上げられて、ルサカの声は高く甘くなっていく。
「あっあ、ん、タキ、ア、奥、だめ、そんな、したら、あぅ…っ……!」
 つま先まで震えながら、ルサカは耐えられないとでもいうように、背中をしならせる。
「……は、……関係ない、かな……。繁殖期でも、そうでなくても……」
 甘く喘ぐルサカの腰を掴んで深く押し付け、奥深くを抉りながら、タキアは切なげな吐息を洩らし、ルサカの唇に唇を寄せ、囁く。
「いつでも君が大好きで、君が欲しいよ。……僕のルサカ。大好きだよ」
 最奥に吐き出された熱い体液に震えながら、ルサカも何度目か分からない解放を遂げる。
 荒い息を紡ぎながらルサカを抱きしめ頬をすり寄せて目を閉じるタキアを抱き返し口付けながら、ルサカは考える。
 結局、タキアのいいように甘やかしてしまうのは、タキアが可愛いから悪い。
 あんな可愛く甘えられたら拒めないし、その上タキアはなんだかんだで、うまくルサカを誘う。
 とってもずるい。
 ルサカの視線に気付いたのか、タキアは目を開けて、嬉しそうに微笑む。
 本当にずるい。ルサカは思わずタキアをぎゅっと抱きしめる。
 こんな可愛くされたら、なんでもしてあげたくなっちゃうじゃないか。こんな『大好き!』って顔されたら、もっともっと好きになってしまうじゃないか。
 見た目は大人で綺麗でかっこいいのに、なんでこんなに可愛いのか。本当に、タキアは甘え上手で可愛くて、うらやましいくらい、ずるい。



2018/02/25 up

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